小児二次救命処置法 PALS (2002年) Pediatric Advanced Life Support
国立成育医療センター救急診療科 清水直樹
V. PALS 導入の意義
PALS を本邦に導入することにより、下記の成果が得られると期待している。
1. | 小児二次救命処置法の標準化 |
---|---|
2. | 蘇生法標準化による、蘇生現場における複数医療従事者のチームワーク形成 |
3. | 蘇生法標準化とチームワーク形成による、小児医療の質の改善とさらなる救命率向上 |
4. | 内因性疾患に伴う蘇生のみならず、外因性疾患(多発外傷等)に伴う小児蘇生対応 |
5. | 旧来の1次・2次施設における小児蘇生能力の充実を図ることで、小児救命救急医療のためのインフラストラクチャーと国内小児救命救急ネットワーク形成を促進 |
6. | 予防も含めた“Chain of Survival”の達成と、小児科医としての Advocacy の自覚 |
7. | アジアの小児医療圏における、国際的リーダーシップ発揮の手掛かり |
PALS 導入の総論的意義は上記のとおりであり、国立成育医療センターにとっての PALS の位置づけとその意義にも重畳する。具体的には、PALS は国立成育医療センター病院総合診療部レジデントの教育プログラムの一環として既に位置付けられており、かつ院内蘇生コード対応の基本プロトコールとしての機能も有している。こうした実践的なかたちで、PALS が国立成育医療センターの総合診療体制のコンセプトに小児蘇生・小児救急医療の側面から大きく寄与しうるものと考えている。将来的にはすべての医師、看護師が身につける時代が来るべきものと考えている。
院外的には、一般人に対する自動除細動の認可や救急救命士に対する気管挿管など救急救命に関する医師以外の職種の取り組みが極めて積極化している現在、小児の Medical Control における Off-line Medical Directives として PALS が適応されてゆく必要があり、PALS の認知も含めた地域救急医療体制への働きかけも求められよう。本邦の一般・成人救急領域では Medical Control が盛んに話題にのぼっており、時期的に好機である。こうした努力を続けることが地域小児救急医療の質の底上げにつながるものと考えている。まさに、PALS の唱える“Chain of Survival”の Advocacy の実践である。
国際的な働きかけも可能である。PALS-ITO はアジア圏で日本が最初であり、AHA からは、韓国や中国への良い影響と協力を期待されている。国立成育医療センターの立場としては、ナショナルセンターとして国際的な医療水準に並ぶとともに、国内的には小児蘇生教育のモデルとなり、かつ小児救急医療ネットワークの要となることで、“Chain of Survival”のアジアにおける国際的発信源となることが充分に可能となると考えている。