小児二次救命処置法 PALS (2002年) Pediatric Advanced Life Support
国立成育医療センター救急診療科 清水直樹
- I. PALS とは
- II. PALS プロバイダーコースの内容
- III. PALS 導入までの経緯
- IV. 本邦における PALS の問題点と課題
- V. PALS 導入の意義
II. PALS プロバイダーコースの内容
PALS コースには、インストラクターコース、プロバイダーコース、再履修コースとがある。北米ではいずれも小児科医師のみでなく、成人救急の医師、看護師、パラメディック、呼吸療法士が広く受講し、小児蘇生の裾野をひろげ、その質の維持に貢献している。ここでは通常のプロバイダーコースにつき解説する。
2000年のガイドライン改定に基づき、PALS にも改訂が加えられ、2001年12月にインストラクター教材、2002年3月にはプロバイダー教材が AHA から発行された。今回は1997年版に対する内容の一部改訂のみに終わらず、PALS コースの教育方法そのものにも大きな変化がもたらされた。もともと PALS や ACLS は実践的な教育コースであり、蘇生用マネキンや実際の器具を使用して繰り返し手足を動かし、座学が少ないのが特徴であった。今回の改訂に伴って座学がさらに減り、ビデオを使用した少人数でのレクチャーや実習が大きな特色になった。AHA はこのためのビデオ教材の作成に多大な努力を費やしたという。
PALS プロバイダーコースの内容につき、1997年版 PALS と2002年版 PALS とを下記に示した。新しい PALS には様々な変化がみられる。Skills Stations においては再び基本に立ち返り、Basic Life Support の復習と確認を取り込むようになった。Airway の Station ではいたずらに気管挿管手技に走らず、Bag-Mask Ventilation をしっかり習得することに重点を移した。Case Scenarios では Trauma の実践的シナリオが増え、Spinal Immobilization などの初療の基本に明確なアクセントをおいている。
Modules は今回の PALS の最大の特徴である。その中でも Sedation に関わる事項が PALS に入ってきたことは重要であり、PALS の習得が日常の小児医療での患者の安全に如何に有為かを示すことになろう。ことに本邦では危機管理意識に希薄な小児科医への警鐘の一環にもなると考えている。その他、Children with Special Healthcare Needs は高度在宅医療が進む将来に向けて広く認識されるべき事項でもあり、北米ではことにパラメディックの方々からの評価が高い。最後に、Coping with Death and Dying は傑作といってよいだろう。これまでにこうした教育がされたことがあったであろうか!こうした Modules は今後もさらに開発されて AHA から提供される予定であるというので、今後が益々楽しみである。
1997年版 PALS
*Lecture: Recognition of Respiratory Failure and Shock
*Lecture: Fluid Therapy and Medications
*Skills Stations: Airway, Cardiac, IV/IO access
*Lecture: Newborn Resuscitation
*Lecture: Integration Cases
*Lecture: Trauma
*Lecture: Stabilization and Transport Issues
*Teaching Stations: Respiratory Failure, Shock, Neonates
*Evaluation Stations: Case Scenario 1, 2, Writing Exam
2002年版 PALS(ガイドライン2000準拠)
*Lecture: Rapid Cardiopulmonary Assessment:
Identification and Treatment of Shock and Respiratory Failure
*Skills Stations: Bag-Mask Ventilation and Advanced Airway,
Arrhythmia Recognition and Management, BLS (Basic Life Support) station,
Vascular Access
*Video: Algorithm, Respiratory Failure and Shock
*Case Scenario Practice Stations:
Shock (include Trauma), Respiratory, Rhythm, Unknown
Pretest Review
*Selected Modules (Selected 4 modules):
Trauma Resuscitation and Spinal Immobilization,
Children with Special Healthcare Needs, Toxicology, Neonatal Resuscitation,
Rapid Sequence Intubation, Sedation Issues for the PALS Provider,
Coping with Death and Dying
*Practical Evaluations and Written Examination:
Written Exam and Course Evaluation, Practical Evaluation 1, Practical Evaluation 2,
AED (Automated External Defibrillator) Evaluation