小児の救命の連鎖と PALS (2004年) Pediatric Advanced Life Support
国立成育医療センター手術集中治療部 清水直樹
- はじめに
- 小児の救命の連鎖
- 小児重症患者搬送システムの必要性
- 脳蘇生の重要性と、小児蘇生レジストリー
- PALS 普及の現状
- 第11回小児集中治療ワークショップ資料集から (2003年)
小児重症患者搬送システムの必要性
小児蘇生の実践現場である小児救急医療システムをめぐっては、これまで初期診療の主体がどうあるべきかといった議論に終始しがちであった。しかし、これでは問題の本質的解決には至らない。
議論の本題をおくべきは、現状の小児三次救急システムに内在する問題点である。その切り口は小児救急救命センター制度の不備、危急的小児患者の緊急搬送システムの欠落、病院前救護と小児メディカルコントロールの視点の始造、その中で小児医療専門施設が果たすべき役割など、枚挙に暇がない。
小児集中治療部門に、外傷を含めた危急的小児患者を連結させるためにも、小児救急部門を窓口とした地域の小児救急医療システムのインフラ構築が急務である。
一次・二次施設で呼吸循環が悪化した小児患者を救命するためには、小児高次施設の小児集中治療部門がその機能を迅速に提供する使命がある。それを実際に実現するためには、搬送元各施設における小児集中治療学に対する理解と搬送のタイミングの理解に加え、病院間における小児重症患者搬送の体制整備が不可欠となる。
搬送医学は蘇生において軽視されがちであるが、これは高度な臨床であり、救急医学と集中治療医学の集大成としての学問領域として発展させてゆく必要がある。当センター手術集中治療部と救急診療科は2003年7月以来、小児に特化した手作りの緊急搬送チームを創り、その活動を開始している。近年では、近隣救命センターの協力もあってヘリコプター搬送も活発化しており、都県の行政単位を越えた小児の救命の連鎖を構築する新しい時代に突入しつつある。